今回は

60歳以降に関する年金制度の改正点3つ

をお話いたします。

 

先日、年金制度改正法が成立、令和2年6月に公布されました。

厚生労働省のサイトに、その概要が載っていましたので

気になる改正点を3つピックアップしてご紹介したいと思います。

 

1) 在職中の年金受給の在り方の見直し

『年金受給の在り方』と抽象的な言い回しですが、

具体的には、年金額改定の仕組みの見直しと、

在職老齢年金制度の減額基準の見直しの2つを

指しています。簡単に触れますね

 

年金額改定の仕組みについて、

65歳以上も引き続き会社などで働く、

厚生年金へ加入しながら働いているとしましょう。

 

65歳以上ですから、

年金も併せてもらっているとしましょう。

ここから一緒に考えてみてください。

 

厚生年金に入っているので、

毎月の給料から天引きで年金保険料は

引かれていますよね。

保険料を払っているのだから、

もらっている年金の金額も、

もちろん増えていくはず。

 

では、いつ増えるのか。今でしょ!と

言いたいところですが、

実は『会社などを辞めたその1箇月後

または『70歳になった時』に増えます。

 

ちょっとびっくりですよね。

知っている方は少ないと思います。

 

今回の改正でもっと早く年金額に

反映されるようになります。

どう変わったのかは後ほどお話いたします。

 

もうひとつ、在職老齢年金の減額基準とは、

60歳以降も引き続き会社などで働く場合、

厚生年金に入っているとその時に

もらっている年金額が減ったり、

時にはもらえなくなったりする制度を

在職老齢年金』と言います。

 

客観的に表現してみると、

・・・あなたは年金と給料を合わせた金額が

一定額を超えています。

なら、年金の金額は少し減らさせてください。

 

そうですね、減額させていただく基準は

年金と給料の合計が28万円になったらにしましょう・・・

という制度。

 

ここで言う『28万円』を超えたら年金減らしますね

という金額が『減額基準』です、

ちなみに『28万円』は

60歳から64歳までの方の基準となります。

 

この金額が見直されるわけですね。

今回の改正で、金額がぐっと上がって、

しっかり働いても年金が減らされにくい基準となります。

具体的な金額については後ほどご紹介いたします。

 

2) 受給開始年齢の選択肢の拡大

受給開始年齢とは、

老後の年金をもらい始める年齢のことを指します。

 

ご存知の通り、老後の年金は、

原則65歳からもらえますが、

『繰上げ制度』や『繰下げ制度』を

活用することで00歳から70歳までの間でも

もらい始めることができます。

 

早くもらい始めると早めた分年金額は減り、

遅くもらい始めれば遅くした分年金額は増える、

という仕組みです。

 

この60歳から70歳という選択肢を

60歳から75歳まで拡大されるのかが今回の改正点。

 

75歳まで遅らせた場合の年金額のお話はもちろんですが、

実は60歳からもらう『繰上げ制度』も改正が入っていて、

早めた分の減額率が下がります。

 

つまり、これまでよりも減らされずに

60歳からもらい始めることが可能となります。

75歳に注目が集まりそうですが、

60歳からもらい始めたい方には朗報となります。

 

具体的な利率については後ほどお話いたします。

 

3) 確定拠出年金の加入可能要件の見直し等

ここでは、個人で加入できる

『個人型確定拠出年金(愛称iDeCo)』の

加入条件の改正点に絞ってお話いたします。

 

『じぶん年金つくり』を国が後押ししてくれる制度です。

2017年1月に改正されて、国民のほぼすべての方が

加入できるようになりました。

 

2016年12月時点での加入者は

約30万人だったところ、

2017年1月の改正によって

加入者は増え続け、令和2年5月時点では

約160万人が加入している制度です。

 

これまでの加入条件は、

60歳までという上限がありましたが、

今回の改正で65歳まで加入することが

可能となります。

 

つまり、65歳まで公的年金とは別の

『じぶん年金つくり』ができるようになります。

 

後ほど、どのような制度がざっくりお話いたします。。

以上3つ、順番に解説していきます。

 

 

年金額改定の仕組みの見直し

冒頭でお話をした通り、

65歳以上の方が会社などで

厚生年金に入りながら働く場合、

もらっている年金額は定期的に

増えていくわけではありません。

 

もっと丁寧に言い直します。

65歳以上で働きながら年金ももらっている方、

毎月払っている厚生年金保険料、

この保険料に相当する老齢厚生年金の増額分は

というと『すぐには増えない』ということです。

 

いつ増えるのかと言えば、『退職の1箇月後

または『70歳になった時』が、

年金額の再計算のタイミングとなります。

 

初めて聞くと驚きますよね。

ですが、今回の改正によって、

在職中でも毎年年金額が改定、

増額される『在職定時改定』たる制度が

導入されます。

 

これまでは、下手をすれば5年間年金額が

増えなかったところ、毎年計算し直して

増額していきますという改正が入りました。

 

在職老齢年金制度の減額基準の見直し

減額基準となる金額は、

60歳から64歳までの方は『28万円』です。

簡単に言ってしまえば、

もらっている年金額と給料の金額が、

この28万円を超えると、

年金額が減額されたり、もらえなくなったりします。

 

年金額については、

1年間で受け取る年金額を12で割って

月額換算した金額を使います。

 

給料については、

1年間でもらう給料の総額と賞与(ボーナス)を

足して12て割った金額のことと考えてください。

 

今回の改正によって、

この金額『28万円』が『47万円』に増額されます。

年金額と給料を足して、47万円以内であれば、

年金は減らされることなく丸々もらえるという訳です。

 

『47万円』であれば、

給料の金額を気にして働くことを控えることは

少なくなるのではないでしょうか。

 

ちなみに現在の減額基準、

60歳から64歳までは『28万円』ですが、

65歳以上は『47万円』です。

 

今回の改正によって、足並みを揃えていく訳ですね。

また、年金額が減額される場合の計算式なども

細かく決まっています。

 

受給開始年齢の選択肢の拡大

老後の年金をもらい始める年齢が、

60歳から75歳まで広がります。

要は、『繰下げ制度』を活用すればもっと、

もらえる年金の金額を増やすることができますよ、

というお話ですね。

 

とは言え『75歳』を

どう捉えるのかは人それぞれです。

 

ですので、

ざっと繰下げをした際の年金額の増額分を紹介した後、

より活用しやすくなった60歳に向け年齢を早めて

年金をもらう『繰上げ制度』をご紹介していきます。

 

老後の年金、原則65歳でもらえるところ、

70歳まで後ろにずらす『繰下げ制度』を

活用した場合には、

年金額は65歳でもらう金額の142%、

1.42倍となります。

 

一ヶ月後ろにずらすごとに0.7%増額されていきます。

そして、改正によって75歳まで

『繰下げ制度』を活用すると、

年金額は65歳でもらう金額の184%、1.84倍となります。

 

原則の65歳よりも10年遅くもらえば

それだけ多くなりますよということですね。

 

次に『繰上げ制度』の改正点。

内容はとてもシンプルです。

これまでは、65歳でもらえる年金を、

60歳まで早めてもらうこととした場合、

年金額は65歳でもらう金額の70%、

つまり30%の減額となっていました。

一ヶ月早めると0.5%の減額です。

 

それが今回の改正によって、

年金額は65歳でもらう金額の76%、

24%の減額となります。その差6%。

改正によって減額される利率が

減ったということです。

若干ではありますが、

繰上げ制度を使いやすくなったのではないでしょうか。

 

『個人型確定拠出年金』の加入条件の見直し

個人型確定拠出年金(愛称:iDeCo) を

ざっくりご紹介しますね。

 

確定拠出年金とは、国民年金・厚生年金(公的年金)を

補完する形で作られた年金制度です。

 

国民年金が1階部分、厚生年金が2階部分、

iDeCo はその上の階層に位置するイメージです。

 

確定拠出年金には、企業型と個人型があります。

個人型は2017年1月に改正されて、

国民のほぼすべての方が入れるよう

iDeCoという愛称もつけて、

国が整備しました。

 

恐らく、iDeCoを活用して、公的年金の他にも、

ぜひじぶんの年金を作ってください。

自己責任とはなりますが。

 

もちろん、老後の資金を増やしやすいよう

お得な制度は用意しますよ。

という経緯で整備した制度かと思います。

 

では、お得な制度は何かと言うと、

手厚い税制優遇などの制度です。

所得税や住民税をグッと抑えて安くできたり、

資産をどんどん増やしたりすることが

期待できる仕組みが用意されています。

 

具体的には、掛け金がすべて所得控除となったり、

通常だと取られる運用益にかかる税金が

非課税になったり、将来貰える年金の計算にも

税制上のメリットがあったりと目白押し。

老後の資産作りへの支援を国が用意している訳です。

 

このような『じぶん年金つくり』に

最適な個人型確定拠出年金(愛称iDeCo)ですが、

これまでは、国内に住んでいる20歳以上60歳未満で

国民年金保険料を払っている方となっていました。

 

将来の年金作りをするという目的もあるため

60歳以上の方は加入できない規定となっていました。

 

しかし、

今回の改正で上限が60歳から65歳未満になります。

ただし、60歳以上の方なら誰でも加入ではなく、

国民年金の被保険者であることなど、

一定の要件に該当した場合となります。

 

現時点では、じぶん年金つくりに

最適な制度のひとつにiDeCoがあり、

その制度への加入が65歳まで広がる、

と覚えておいていただければと思います。

 

最後に適用の時期をお話して

終わりにしたいと思います。

 

ひとつ目の年金額改定の仕組みの見直しと、

在職老齢年金制度の減額基準の見直し。

については、2022年4月からの適用となります。

 

ふたつ目の受給開始年齢の選択肢の拡大については、

2022年4月から適用され、

2022年4月1以降に70歳に達する方が対象です。

 

みっつ目の個人型確定拠出年金(iDeCo)の

加入年齢の拡大については、

2022年5月から引き上げることになっています。

 

ご参考になれば幸いです。