今回は

60歳以降働く時に知っておきたい4つの制度

についてお話いたします。

 

人生100年時代を見据えて、

60歳以降も長く働いていくこと、

これからの時代当たり前のことと

なっていくのだと思います。

 

そこで60歳以降働く際に

ぜひ知っておいて欲しい

4つの制度をピックアップして

ご紹介したいと思います。

 

4つの場面を想定して、

その場面ごとに思い出して欲しい制度を

お話していきます。

 

4つの場面とはどのような時か。

 

働こうと決めた時

働いたはいいが給料が激減した時

働いて収入が増えた時

会社などを辞めた時

 

の4つとなります。

 

具体的には、

働こうと決めた時』には、厚生年金と健康保険への

加入の条件が関係してきます。

改正によって徐々に加入への間口は

拡がっていきますので合わせてお伝えいたします。

 

働いたはいいが給料が激減した時』には、

雇用保険から給料を補填する給付金の制度があります。

ですが、改正によって徐々に減らされ、

廃止も検討されていますので、

ぜひ知っておきましょう。

 

働いて収入が増えた時』には、

もらっている年金額が減らされる制度があります。

改正によって今後は緩和されていきますので

そちらも合わせて。

 

会社などを辞めた時』には、

雇用保険から所得保障の制度があります。

ですが、60歳代のいつ辞めるのか、

日付によってもらえる金額は大きく異なります。

 

 

働こうと決めた時

厚生年金と健康保険への加入の条件が関係してきます。

これからご紹介する4つの条件を

すべて満たすと加入となります。

 

加入しようと思う方は条件を

満たすような働き方を考え、

加入したくない方は条件を

満たさないような働き方を考えてください。

 

なお、条件のご紹介の後、

改正によって今後条件のひとつが

緩和されていきますので、その点もご確認ください。

 

1)1週間の労働時間が20時間以上であること

週4日の勤務なら1日5時間以上、

週3日の勤務なら7時間程度働くと

この条件を満たすという訳ですね。

 

2)1ヶ月の賃金が88,000円以上であること

残業手当や通勤手当は除きます。

この条件は働く時間と時給の関係で決まってきますね。

 

3)雇用期間の見込みが1年以上であること

見込みですので、1年未満の契約であっても

随時更新がある旨の記載があれば

この条件を満たすことになります。

 

4)従業員数501名以上の会社で働いていること

 

以上4つとなります。

 

4つ目の従業員数の規模要件が、

今後改正によって緩和されていきます。

つまり、厚生年金への加入対象者が増えていきます。

 

2022年10月に『101人以上』に、

2024年10月からは『51人以上』に引き上げられ、

厚生年金への加入者は約65万増えるようです。

4つの条件と改正点含めて

働き方を考えていただければと思います。

 

働いたはいいが給料が激減した時

雇用保険から給料を補填してくれる制度があります。

雇用保険の『高年齢雇用継続給付』の中の

高年齢雇用継続基本給付金

という給付金になります。

 

ここでいう『高年齢』とは

60歳から65歳までを指していますので、

60歳以上で雇用を継続された方への

給付という意味合いになります。

 

高年齢雇用継続基本給付金とは、

どのようなものかざっくりと言えば、

60歳時点の給料の金額と

60歳以後の給料の金額を比較して、

3/4未満に減っているともらえる給付金です。

 

高年齢雇用継続基本給付金を

もらうための条件は4つです。

 

1)失業手当(基本手当や再就職手当など)を貰っていないこと

60歳以後も引き続き働く方を

対象としている給付金です。

ですので、会社などを辞めたら

一度失業手当を貰ってから、

少し休憩を挟んでからとお考えの方は

注意してください。対象外となってしまいます。

 

2)60歳以後の給料が一定割合未満に減っていること

一定割合とは。75%未満、3/4未満に減っていること。

何と何を比較して判断するのかと言いますと、

60歳時点での給料と、

60歳以後の給料(新しい給料の金額)の

金額を比較して、

60歳時点の給料の75%未満の金額となっていること。

 

例えば、これまで40万円だった給料が、

60歳以後の契約においては

29万円台に減っていたら対象というわけですね。

40万円の3/4が30万円ですからね。

 

なお、給料には、

残業代や通勤代などの各種手当も含めての

金額となります。

ただし、賞与(ボーナス)は含みません。

 

3)被保険者であった期間が5年以上あること

雇用保険に加入していた期間が5年以上あること。

『被保険者期間5年以上』ではなく

『被保険者であった期間』という言い回しと

なっているのは、転職する際の転職活動期間が

ある方でも対象となるからです。

 

会社を辞めた日(離職した日の翌日)から

再就職した日の前日までの期間が

1年以内であればこの5年に含めることが可能です。

 

つまり、会社を辞めてから1年以内の再就職なら

この給付の対象となるわけです。

ただし、この1年の間に雇用保険の給付を

もらうと通算はできなくなります。

 

4)60歳以上65歳未満の方で、一般被保険者であること

60歳以上65歳未満で雇用保険に加入している、

働いている方ということですね。

ちなみに高年齢雇用継続基本給付金は、

65歳になるまで貰うことができます。

 

60歳以上であったとしても、

雇用保険の加入期間が5年となった時から

もらうことができます。

 

以上、4つの条件を満たすと

高年齢雇用継続基本給付金がもらえる

ということになります。

 

では、高年齢雇用継続基本給付金、

気になる金額はいくらなのか。

 

最大で新しい給料の15%の金額となります。

60歳時点での給料と、

60歳以後の給料(新しい給料の金額)の金額を比較して、

60歳時点の給料の75%未満の金額となっていること。

が条件のひとつにありましたが、

このパーセンテージが61%未満となる場合、

最大の15%相当分の金額となります。

 

例えば、60歳前の給料が35万円としましょう。

60歳で再雇用となりその後にもらう

給料の金額が26万円となった。

この場合は約74.2%です。

 

75%未満となり対象となるわけですね。

そして、21万円まで下がると60%、

61%未満ですので15%。

給付金は31500円(21万円×15%)。

 

合計、241,500円(21万円+31500円)と

いうことになります。

なお、基本給付金には上限額があります。

 

月の給料が36万3344円以上の場合、

この給付金は出ません。

また、新しい給料と基本給付金の合計が

36万3344円を超える場合は

その差額が給付金の金額となります。

 

また、計算された給付金の金額が

2000円以下の場合も支給されません。

 

働いて収入が増えた時

60歳以降も引き続き会社などで働く場合、

厚生年金に入っているとその時に

もらっている年金額が減ったり、

時にはもらえなくなったりします。

 

この制度を『在職老齢年金』と言います。

もちろん、なんでもかんでも

減らされるわけではありません。

 

もらっている年金額が減るのか、

減らないのか、条件というか基準があります。

 

その基準は2つです。

 

ひとつが、受け取る予定の年金額。

もうひとつが、給料の金額となります。

 

年金額については、

1年間で受け取る年金額を12で割って

月額換算した金額を使います。

基本月額と言います。

 

給料については、1年間でもらう給料の総額と

賞与(ボーナス)を足して12て割った

金額のことを指します。

総報酬月額相当額と言います。

 

専門用語はさておき、

この年金額と給料、2つの金額によって、

減るのか減らないのか、

減るならいくら減るのか、が決まるわけです。

 

実はこの在職老齢年金制度、

65歳を境にして計算の仕方が違います。

知らなくても問題ないと思いますので

ざっくり金額だけ言いますね。

 

60歳~64歳までの方の場合、

年金額と給料を足して28万円以下なら

年金すべて丸々貰えます。

減ることはありません。

 

しかし、28万円を超えると年金は

減らされるか貰えなくなります。

 

そして、65歳以上の方の場合は

この『28万円』が『47万円』に変わります。

少し緩和されます。

 

年金額と給料を足して47万円以下なら

年金すべて丸々貰えます。

減ることはありません。

 

しかし、47万円を超えると

年金は減らされるか貰えなくなります。

 

60歳~64歳までの方の基準に改正が入り、

2022年4月からは『47万円』

65歳以上の方の基準と同額となります。

減額を気にすることな

働きやすくなったのではないでしょうか。

 

ちなみに、減額の対象となる年金は、

60歳~64歳までの方は『特別支給の老齢厚生年金』、

65歳以上の方は『老齢厚生年金』となります。

 

会社などを辞めた時

失業給付(基本手当)をもらうことができます。

 

失業給付をもらうための条件は3つ。

 

1.会社を辞めて(離職)雇用保険の被保険者でなくなったこと

2.就職の意思と能力があるにもかかわらず、職業に就くことができないこと

「失業の状態」にあること。

3.離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること

ただし、

特定受給資格者又は特定理由離職者については、

離職の日以前1年間に、

被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも

もらえます。

 

特定受給資格者とは、

『倒産』等により離職した者や

『解雇』等により離職した者を指します。

 

失業給付(基本手当)の金額ともらえる日数

もらえる日数を所定給付日数と言います。

会社を辞めた日(離職した日)における年齢や

雇用保険の被保険者であった期間及び

離職の理由などによって決定されます。

 

60歳以上65歳未満ですと、

自己都合退職の場合は

90日から150日の間で決定されます。

 

失業給付(基本手当)の1日当たりの金額を

基本手当日額』といいます。

この『基本手当日額』は原則として

離職した日の直前の6か月の給料(賞与等は除く)の

合計を180で割った金額。

 

この金額(賃金日額)の

およそ45~80%となります。

給料の金額が低い方ほど高い率が設定されています。

 

この基本手当、

60歳から64歳まではもらえますが、

65歳になってしまうと給付の種類が

変わり『一時金』となり

給付日数が減ってしまいます

 

60歳代前半であれば、

被保険者期間が1年以上あれば、

少なくとも90日(3ヶ月分)の手当がもらえるところ、

65歳以上になると、

多くとも50日分の一時金となってしまいます。

 

60歳代前半と65歳ではもらえる

雇用保険の給付の種類が違うと覚えておいてください。

 

どうすればいいのかと言うと、

65歳になるお誕生日の前々日に退職することで

切り替わる前の手当(基本手当)を

もらうことが可能です。

 

なぜ、前々日なのかと言えば、

法律上、誕生日の前日の時点で1歳増えるからです。

今日が誕生日で65歳だとすると

昨日の時点で65歳になったと

法律ではみなされます。

 

そのため、『前々日』の手続きが

必要となるわけです。

 

ご参考になれば幸いです。