今回は

2022年からの年金の法改正4つ

をお話いたします。

 

2022年の4月、5月、10月から

法改正が適用されます。

 

全体的にどのような内容かざっくり言うと

『今後、長く働きたい人がより

長く働くことができるよう

基盤を整備する』ための改正と言えます。

 

4つの改正点をそれぞれ短く表現すると、

〇 働いた分の年金はすぐ支給する

〇 働くことによって年金が減額されずに手取り額を増やす

〇 年金の受け取り方の選択肢を増やす

〇 将来の年金額を増やしやすくする

 

となります。

先ほどは、『今後、長く働きたい人が

より長く働くことができるよう』

とお話しましたが実際のところは

『今後は長く働かざるを得ない時代になってきている』

ことと思います。

 

今後どのように国の制度が変わっていくのか、

そして必要に応じて活用するためにも

この機会に知っておくのはいかがでしょうか。

 

これより改正点を4つご紹介していきますが、

数が多いのでポイントを絞って要点だけお伝えしていきます。

 

 

年金額改定の仕組みの見直し(2022年4月から)

年金額改定の仕組みとはどのようなものか、

説明するために問題をひとつ。

 

あなたは65歳以上です。

現在も引き続き会社などで働いて、

厚生年金へ加入しながら働いています。

老後の年金は原則65歳からもらえますから、

給料と老齢年金を一緒にもらっている状況です。

 

厚生年金に入っているので毎月の給料から

厚生年金の保険料は天引きされています。

その保険料を払った分、厚生年金の老後の年金である

『老齢厚生年金』はもちろん増えていきます。

 

では、

いつどのタイミングで

増額されるのでしょうか。

 

一番いいのは保険料を払ったら

次回の年金額振込みの際に

その分反映されて増えていくのがいい。

 

正解は

会社などを辞めたその1箇月後

または

70歳になった時

に増額される、改定される。

 

辞めるか70歳か、初めて聞くと驚きますよね。

 

今回の改正によって、

働いていても(在職中でも)

毎年年金額が改定されます。

 

1年単位での見直しとなりますが、

これまでは下手をすれば5年間年金額が

増えなかったことを考えると、

よくなったかなと思います。

 

在職老齢年金の見直し(2022年4月から)

在職老齢年金とは、

60歳以降も引き続き会社などで働く場合、

厚生年金に入っているとその時にもらっている

年金額が減額される制度です。

 

簡単に表現すると

『あなたは給料と年金をもらっていますね。

給料と年金を合わせた金額が一定額を超えていますので、

年金の金額は少し減らさせていただきます。

 

ではこうしましょう、

減額させていただく基準は年金と給料の合計が

28万円を超えたらにしましょう。』

 

このような制度です。

 

60歳から64歳までの方の基準が『28万円』です。

今回の改正でこの基準、金額が見直されるわけですね。

28万円』が『47万円』に増額されます。

 

年金額と給料を足して、47万円以内であれば、

年金は減らされることなく丸々もらえるという訳です。

給料の金額を気にして働くことを控えることは

少なくなるのではないでしょうか。

 

ちなみに、ここで言う年金の金額は、

1年間で受け取る年金額を12で割って

月額換算した金額を使います。

 

給料の金額については、

1年間でもらう給料の総額と賞与(ボーナス)を

足して12て割った金額のことを指しています。

 

実はこの減額基準、

65歳以上の方については『47万円』です。

今回の改正によって、足並みを揃えていく訳ですね。

 

受給開始年齢の選択肢の拡大

受給開始年齢とは、

老後の年金をもらい始める年齢のことを指します。

 

ご存知の通り、老後の年金は、原則65歳からもらえますが、

『繰上げ制度』や『繰下げ制度』を活用することで

00歳から70歳までの間でももらい始めることができます。

 

早くもらい始めると早めた分年金額は減り、

遅くもらい始めれば遅くした分年金額は増える、

という仕組みです。

 

この60歳から70歳という選択肢を

60歳から75歳まで拡大されるのかが今回の改正点。

 

75歳まで遅らせた場合の年金額のお話はもちろんですが、

実は60歳からもらう『繰上げ制度』も改正が入っていて、

早めた分の減額率が下がります。

 

つまり、これまでよりも減らされずに

60歳からもらい始めることが可能となります。

75歳に注目が集まりそうですが、

60歳からもらい始めたい方には朗報となります。

 

まずは、

繰下げをした際の年金額の増額分を紹介した後、

より活用しやすくなった60歳に向け年齢を

早めて年金をもらう『繰上げ制度』を

ご紹介していきます。

 

老後の年金、原則65歳でもらえるところ、

70歳まで後ろにずらす

繰下げ制度』を活用した場合には、

年金額は65歳でもらう金額の142%、

1.42倍となります。

 

一ヶ月後ろにずらすごとに0.7%増額されていきます。

そして、改正によって75歳まで

『繰下げ制度』を活用すると、

年金額は65歳でもらう金額の184%、

1.84倍となります。

 

単純に、原則の65歳よりも

10年遅くもらえばそれだけ多くなりますよ

という改正ですね。

 

次に『繰上げ制度』の改正点。

 

内容はとてもシンプルです。

これまでは、65歳でもらえる年金を、

60歳まで早めてもらうこととした場合、

年金額は65歳でもらう金額の70%、

つまり30%の減額となっていました。

 

一ヶ月早めると0.5%の減額です。

それが今回の改正によって、

一ヶ月早めると0.4%の減額率となります。

 

60歳まで早めた場合の年金額は

65歳でもらう金額の76%、24%の減額となります。

その差6%。若干ではありますが、

繰上げ制度を使いやすくなったのではないでしょうか。

 

繰上げ減額率は令和4年4月1日以降、

60歳に到達する方を対象としています。

 

改正後の繰下げについては、

令和4年4月1日以降に70歳に

到達する方が対象となります。

 

厚生年金への適用拡大(2022年10月から)

パートやアルバイトの方などが

厚生年金へ加入する

可能性が高くなるとお考え下さい。

 

厚生年金へ加入となる主な条件は3つあり、

その内のひとつに改正が入ります。

ひとつずつ解説します。

 

働く会社などの従業員数(2022年10月から)

従業員数501名以上の会社などで

働くと条件を満たすことになります。

 

ですが現在は、

従業員数500人以下の会社であっても、

会社側と働く側の合意があれば、

厚生年金へ加入となります。

 

500名以下の会社などであっても、

中には『うちは厚生年金に加入してもらっています』

という所もあるという訳ですね。

 

気になる方は働く前に確認しましょう。

 

今回の改正で、この従業員数が段階的に少なくなります。

2022年10月から従業員数が101名以上となり、

2024年10月からは.51名以上となります。

 

多くの会社で厚生年金への加入対象者が増えていく、

拡大していくという流れになっています。

 

ここでいう従業員数とは、ざっくり言えば、

正社員の方とそれに準ずる方の人数の合計となります。

 

要するに、これまでその会社において

厚生年金に加入となっていた方すべての人数を

含めるということです。

 

また、一度条件を満たすとその後従業員数が

条件を下回った場合でも原則そのまま、

条件を満たしたままとなります。

 

1週間の働く時間、労働時間

1週間の所定労働時間が20時間以上あること

1週間で20時間以上働く方となります。

 

週4日勤務なら1日5時間以上、

週3日勤務なら7時間程度となります。

 

20時間の判断については、

基本的には、契約上の所定労働時間で

みることになりますので、

急に発生した残業時間などは含めません。

 

また、この20時間以上。これまでは、

正社員の3/4以上という条件で

概ね30時間以上での厚生年金加入となっていました。

それが20時間と、敷居が下がったという訳ですね。

 

給料の金額

月の給料が88,000円以上であること。

 

この金額には、

残業代や休日・深夜労働の割増分や賞与(ボーナス)

などは含みません。

 

なぜ、88,000円と中途半端な金額なのか。

12倍して年額にするとわかるかも知れません。

 

88,000円に12を掛けると105万6千円、

約106万円となります。

年収の壁106万円、というのはここから

きているわけですね。

 

少し補足です。

条件は主に3つと紹介していますが、

実はもうひとつ条件があります。

 

それは『学生でないこと』です。

 

学業を本分とする学生さん、

昼間学校へ通っている学生さんのことですね。

 

また、これまでは

『1年以上雇用される見込みがあること』も

条件にありましたが、

 

法改正によって撤廃されます。

その代り『2ヵ月を超える雇用見込があること』が

適用されていくことになります。

 

パートやアルバイトでも厚生年金加入となる

条件3つ振り返りますね。

 

条件は『従業員数』と『労働時間』と『給料の金額』。

従業員数

現在は、501名以上の会社などが

厚生年金加入の条件となります。

 

なお、500名以下であっても会社によっては、

厚生年金に加入するところもある。

 

ここが、2022年10月には101名以上に、

2024年10月には51名以上と

従業員数が少なくなっていきます。

 

労働時間

1週間の所定労働時間が20時間以上あること。

給料の金額

月の給料が88,000円以上であること。

 

この3つ。

さらに

学生さんでないこと

雇用期間2カ月を超える見込み

を含めて5つの条件を満たすと

厚生年金に加入することになります。

 

ご参考になれば幸いです。