今回は、
『65歳以降働くことの良い点・悪い点』
についてお話いたします。
なお、ここでいう『65歳以降働く』の『働く』は、
厚生年金に入りながら働くことを想定しています。
そのため、パートやアルバイトという働き方であっても
厚生年金へ加入する場合は対象となるお話です。
老後の年金は、
厚生年金から老齢厚生年金、
国民年金から老齢基礎年金
が原則65歳からもらえます。
一般的にはずっと自営業や専業主婦の方であれば国民年金から、
会社員や契約社員、パートやアルバイトなど厚生年金に入っていれば、
国民年金と厚生年金から2つの年金を受け取れます。
65歳から年金をもらえるのなら、
それ以降は悠々自適な年金暮らしが待っているのか、
というとこればかりはわからない。
ひとりひとりの年金額は違いますし、
老後に必要な生活費を違うからです。
ここでひとつ参考になりそうな資料を見つけてきました。
その資料とは、
『総務省「人口推計」令和元年10月1日(確定値)』です。
ここには男性は60歳代後半でも全体の半数以上が働いている、
という集計結果が載っています。
まわりの60歳代の人の働き方に関するデータを簡単にご紹介し、
その後、65歳以降働くことで厚生年金や健康保険、
雇用保険についてどのような取り扱いとなるのか
お話していきたいと思います。
『総務省「人口推計」令和元年10月1日(確定値)』によると、
男性で働いている方の割合は、
55~59歳で91.1%、60~64歳で82.3%、
65~69歳で58.9%
となっています。
女性で働いている方の割合は、
55~59歳で73.2%、60~64歳で58.6%、
65~69歳で38.6%となっています。
このデータから、60歳を過ぎても多くの方が
就業していることがわかります。
さらに、70~74歳の割合をみると、
男性が41.1%、女性が24.2%となっていました。
では、なぜ働いているのかと働く理由について質問すると
『収入を得たいから』45.4%、
次いで
『働くことは体によいから、老化を防ぐから』23.5%、
『仕事そのものが面白いから自分の知識・能力を生かせるから』21.9%、
という回答結果となっていました。
ここからは、65歳以降働くことで厚生年金や健康保険、
雇用保険についてどのような取り扱いとなるのかを
お話していきます。
わかりやすく、良い点・悪い点と分けていますが、
良いか悪いかの判断はあなた自身にお任せしたいと思います。
老後の年金(老齢厚生年金)の金額が増える
良い点一つ目は
老後の年金(老齢厚生年金)の金額が増えること。
厚生年金からもらえる老後の年金、
老齢厚生年金の金額を増やすことができます。
現在、厚生年金は70歳まで入ることができます。
そして、老齢厚生年金の年金額は、ざっくり言えば、
給料(収入)と加入していた期間によって計算されます。
ご参考に65歳から70歳までの5年間
働いた場合にもらえる年金額をご紹介します。
例えば、年収150万円で5年働いた場合には、
年額で約4万円年金額が増えます。
税金や手取り額は一旦忘れて、身近な例で考えると、
年収150万円は12ヶ月で考えると、月125,000円です。
仮に時給1,250円で計算すると、
月の働く時間は100時間必要となります。
1日の働く時間を8時間とするなら、
月に12.5日働くことに、
週3日程度働くということになります。
働く時間を6時間とすると週4日程度
働くということになります。
時給1,250円で週3日、
4日働くと年額約4万円増えると言い換えることができます。
もちろん、週3日勤務であっても厚生年金へ入ることになる
会社などで働くことが必要となるお話です。
いやいや、週3.4でなく週5(フルタイム)で構いませんよ、という方。
では、年収300万円で5年間として計算すると、
年額で約82,000円の増額となります。
増額された老後の年金(老齢厚生年金)は、
ずっともらい続けることができます。
健康保険の所得保障の制度を利用できる
良い点ふたつ目は、
厚生年金と合わせて健康保険に入ることになるため、
所得保障の制度を利用できます。
主な制度を紹介すると、
病気やケガによって働くことができなくなってしまった場合に
支給される『傷病手当金』があります。
一定の要件に該当すれば、療養のため4日以上会社を休む場合には、
給料の約2/3を最長1年6ヶ月もらうことが可能です。
会社を休んでいても給料が出ていたり、
労災保険の給付や年金などをもらっていたりする場合は、
調整されることもあります。
扶養している配偶者の社会保険料がいらない
良い点みっつ目は
扶養している配偶者の社会保険料がいりません。
扶養している配偶者、専業主婦(主夫)ご本人の
健康保険の保険料と国民年金の保険料が
いらないということですね。
働いているのが旦那さんであれば、
奥さんは旦那さんの保険証を使って医療行為などを受けることができ、
国民年金の保険料も自ら払う必要はありません。
旦那さんが支払う厚生年金保険料に含まれているとお考えください。
雇用保険の失業手当(基本手当)がもらえない
ここからは悪い点です。悪い点のひとつ目は
雇用保険の失業手当(基本手当)がもらえなくなること。
ご存じの通り、
雇用保険は会社を辞めたり働けなくなったりした場合に
給付が支給される制度です。
会社などを辞めた時には『失業手当(基本手当)』がもらえますが、
この手当は65歳までの給付となっています。
65歳になってしまうと給付の種類が「一時金」へと変わり、
基本手当よりも給付される日数が減ってしまいます。
60歳代前半の方で、
雇用保険に入っている期間が1年以上あれば、
少なくとも90日(3ヶ月分)の給付が支給されるところ、
65歳以上になると多くとも50日分の一時金となってしまいます。
60歳代前半と65歳ではもらえる
雇用保険の給付の種類が違うと覚えておいてください。
年金額が減額される可能性があること
悪い点のふたつ目は
『在職老齢年金』制度によって、
年金額が減額される可能性があること
どのような制度かといいますと、
「60歳以上で厚生年金に入りつつ働いていて給料をもらっている方、
合わせて老後の年金ももらっているのであれば、
年金額少し減らしますね。という制度です。
年金額が減額されるかも知れないわけです。
給料と年金をダブルでもらっていると、
年金が減らされる仕組み、それが「在職老齢年金」制度になります。
受け取る予定の年金額と給料などの金額によって
減額されるかが決まります。
年金額については、
1年間で受け取る年金額を12で割って月額換算した金額を使います。
基本月額と言います。
給料については、
1年間でもらう給料の総額と賞与(ボーナス)を足して
12て割った金額のことを指します。
総報酬月額相当額と言います。
基本月額と総報酬月額相当額を足して47万円以下なら
年金すべて丸々貰えます。減ることはありません。
しかし、47万円を超えると年金は減らされるか
もらえなくなります。
47万円が基準ですので、減額される方は少ないかと思いますが、
このような制度が存在しています。
社会保険料の負担が発生する
悪い点のみっつ目は
社会保険料の負担が発生します。
保険料を払うことで年金額を増やす訳ですから
当たり前と言えば当たり前の話ですが。
厚生年金の保険料について、おおまかに言えば、
給料と賞与の金額に一定の利率(現在は18.3%)をかけた金額が
保険料の金額となります。会社が半分負担する形となります。
さらに健康保険の保険料と介護保険の保険料も発生します。
ご参考になれば幸いです。
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