今回は、

老後の年金 60歳からもらう【繰上げ受給】と

70歳からもらう【繰下げ受給】』

についてお話いたします。

 

老後の年金、原則65歳でもらうところ、

60歳に向けて早くもらうようにする『繰上げ受給』と

70歳に向けて遅くもらうようにする『繰下げ受給

についてのお話となります。

 

現在の年金制度では、

原則65歳から老後の年金をもらうことができます。

また、60歳から70歳の10年の間で、

あなた自身でもらい始める時期を選ぶこともできます。

 

なお、法改正によって2022年4月以降は

60歳から75歳の15年間の間で選べるよう拡大されます。

 

65歳より早くもらう『繰上げ受給』と、

65歳より遅くもらう『繰下げ受給』。

 

繰上げ受給は60歳に向けて早めるほど、

1ヶ月単位でもらう年金額が減額されていきます。

対して、繰下げ支給は70歳に向けて遅くすればするほど、

もらう年金額が増額されていくという仕組みです。

 

 

厚生労働省年金局

「平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

によると、国民年金の老齢基礎年金の場合、

65歳からの原則支給で年金をもらっている方は

全体の約67%を占め、繰上げ受給の割合が約30%、

繰下げ受給の割合は1.5%という結果が出ています。

 

100人中、繰下げ受給をする方は

1人か2人という計算になる訳ですね。

繰下げをする方はほとんどいないというのが現状。

 

その理由は簡単に想像できます。

繰下げることで年金額が増えるのはいいけれど、

それまで生活資金をどうするのか、

また元気でいられるのかという大きな問題が

立ちふさがります。

 

この問題、先々の不安によって

繰下げ受給を選択する方は少ないのでしょう。

 

と、ここまでは一般的なお話です。

ここからは実務的なお話に入っていきます。

実務的とは言っても難しい内容ではありませんのでご安心を。

 

では、ひとつ質問です。

あなたは、繰下げ受給を選びました。

 

では、何歳から老後の年金をもらうことに

なるのでしょうか?

 

「えっ70歳ではないの?

70歳まで5年間は我慢するから、

年金額が増えてもらえるのでしょ。」

 

「いやいや

66歳とか67歳とか年齢を選ぶのでしょ?」

 

などと思われた方、すみません不正解です。

 

正解は、66歳以降なら好きな時に

1箇月単位で請求することができる。です。

 

もらう年齢をあらかじめ決めることはしません。

もらいたい時に請求すれば、

65歳からそのもらいたい時までの我慢した

期間分増額された年金を受け取ることができます。

 

また、受け取り方も2種類用意されていて、

実は柔軟な制度でもあります。

えっそうなの?と思われた方は、

ぜひ読み進めていただけばと思います。

 

繰上げ受給と繰下げ受給はセットのようなもので、

対比しながら聞いていただけると

理解しやすいと思いますので、

始めに繰上げ受給を紹介して、

次に繰下げ受給のお話をしていきます。

 

繰上げ受給

原則65歳でもらえるところを

60歳からもらえるようにする制度です。

 

繰上げ受給をする際には、

繰上げの請求が必要となりますので、

お勤めの会社で確認をするか、

60歳以降にお近くの年金事務所などで

確認をしてみてください。

 

もらい始める時期は、

65歳から1箇月単位で最大60歳まで

繰り上げてもらい始めることができます。

つまり、1年は12箇月、5年で60箇月なので、

約60の時期から選ぶことができるわけですね。

 

繰上げ受給の良い点は、

ずばり早くお金をもらえることです。

その代り、もらう時期を1箇月早めるごとに

0.5%ずつ年金額が減額されていきます。

 

1年前倒しで64歳からもうことにすると6%の減額、

最大60歳からもらうことが出来ますが

この場合だと30%減額された年金額となります。

 

一度、手続き(請求)をすると取り消しはできず、

減額は一生涯続くことになりますので

繰上げは慎重に検討してください。

 

なお、法改正によって、

今後は減額率が1箇月0.4%となります。

若干減額される金額が減る、

もらえる分が増えるということですね。

 

繰下げ受給

原則65歳でもらえるところを

66歳から70歳の間でももらえる制度です。

 

66歳からとなるため65歳から1年間は

繰下げ受給の増額は適用されないという点がポイントです。

 

66歳以降は、

1箇月遅らせるごとに0.7%の増額となります。

1年で8.4%、最大5年遅らせて70歳からもらうと42%、

1.42倍された年金額をもらうことができます。

 

また、老齢基礎年金と老齢厚生年金を

別々に繰下げ請求することも可能です。

どちらかだけを繰下げ請求したり、

請求時期をずらしてもらったりすることも可能です。

 

例えば、65歳の時に70歳まで頑張って

繰下げて年金額を増やそうと決めました。

しかし、その2年後の67歳の時、

ご家族の事情などで翌年の68歳から

年金をもらうことに変更しました。

 

この時点で年金を請求、

繰下げ請求することになります。

 

この場合、年金の受け取り方は2つあります。

1)繰下げによって増えた年金額を68歳からもらう方法

※繰下げによる増額請求

2)繰下げによって増えた年金ではなくて、3年分を一度にもらう方法

※増額のない年金をさかのぼって受給

 

ひとつ目は、

68歳からの増額された年金

(3年なので36箇月×0.7=25.2%増しされた年金額)を

68歳からもらい始める方法です。

 

ふたつ目は、

繰下げによる増額された年金はやめて、

65歳66歳67歳でもらうはずだった

原則支給であった元の3年分の年金額を

一時金としてもらう方法です。

 

今回の例で言えば、ご家族の事情の内容によって、

増額された年金額を今後ももらうのか、

まとまった一時金にしてもらうのかを

決めることになります。

 

繰上げ受給と繰下げ受給を

ひとまとめにして考えてしまうと、

ある勘違いをしてしまう可能性があります。

 

どのような勘違いかと言うと、

繰上げ受給を選ぶと60歳から

もらい始めることができる、

 

年金額は減るけども原則よりも5年早くもらえる。

メリットは5年早くもらえること。

デメリットは年金額が減ってしまうこと。

ここからが勘違いです、

 

なので繰下げ受給を選ぶと

70歳からもらい始めることとなる。

年金額が増えるけれども原則より

5年遅くもらうことになる。

メリットは年金額が増えること。

デメリットはもらい始めるのが5年遅くなること。

だから5年間は我慢する。

 

論理的にはとても正しい気がしてしまいます。

ですが先ほどお話をした通り、

実際は、そのようなことはありません。

 

繰下げ受給は、

66歳以降であればいつでも請求することで

もらい始めることが可能です。

 

66歳以降、もらいたい時にもらうことができる制度が

『繰下げ受給』ですので

ぜひ覚えておいていただければと思います。

 

繰上げ受給と繰下げ受給について

お話をしてきました。

どの時期に老後の年金をもらい始めるのが

いいのかはあなた次第となります。

 

繰上げ受給については、

取消しができませんので慎重に決めてください。

繰下げ受給については、

もらい始める年齢を指定するものではなく、

66歳以降であれば

1箇月単位でもらう時期を選ぶことが可能です。

 

ご参考になれば幸いです。