今回は
『65歳以上の年金 繰下げ受給の勘違いしやすい点』
についてお話します。
老後の年金を原則の65歳から受け取るのではなく、
もらう年齢を後ろに下げて年金額を増やしてもらう
『繰下げ受給』のお話となります。
反対に、年金額は減額されますが早くもらえる
『繰上げ受給』という制度もありますが、
今回は『繰下げ受給』に焦点を当てたいと思います。
老後の年金
原則となる老後の年金は、
国民年金から『老齢基礎年金』、
厚生年金からは『老齢厚生年金』
となり、65歳から受け取ることができます。
自営業やフリーランス、専業主婦(主夫)などを
ずっとしてきた方は国民年金からのみ、
会社員や公務員、パートやアルバイトで厚生年金に
1ヵ月以上加入した方には
国民年金と厚生年金2つの年金を
もらうことができます。
繰下げ受給とは
『繰下げ受給』とは
これら老後の年金を65歳からではなく、
後ろにずらしてもらう制度です。
現在は70歳までもらう年齢を
遅らせることが可能です。
来年の2022年4月からは法改正により、
もらう年齢を75歳まで
10年遅らせることが可能となります。
このような法改正がされている反面、
厚生労働省の平成29年度調査によると、
国民年金の老齢基礎年金の場合、
65歳で年金をもらっている方は全体の64.5%、
繰上げ受給が32.3%、繰下げ受給は1.5%という
統計データが出ています。
全体が100人なら、
繰下げ受給をする方は1人か2人という割合です。
ほとんどの方は繰下げないのが現状です。
理由は簡単に想像できますよね。
繰下げることで年金額が増えるのはいいけど、
平均寿命は延びてきているとは言え、
それはあくまで平均値です。
自分自身が長生きできるのか、
繰下げした年齢まで元気でいられるのか。
また、繰下げた年齢からもらい始めてから
長くもらい続けることができるのか。
このような思いが、繰下げ受給を選ばない、
選べない理由になるのかと思います。
『繰下げ』制度をなんとなくでも
知っている方は多いと思います。
~ 老後の年金はもらう年齢を後ろに下げれる。
現在なら70歳までで、年金額は42%増額される ~
ざっくりとでも知っている方は多いかと思います。
ですが、ざっくりとだと勘違いの可能性も高いです。
勘違いしやすい点
どのような点が勘違いしやすいのか説明するために
始めに『繰上げ受給』を解説します。
『繰上げ受給』とは、
年金をもらう年齢を原則の65歳から
60歳に向けて早めることができる制度です。
もらう年齢を早めるという長所と引き換えに、
年金額が減額とう短所があります。
60歳から年金をもらうと年金額は、
65歳でもらう年金額の70%。
3割減の年金額が60歳から一生続きます。
そのため『繰上げ受給』は、
『年齢を早くするから年金額が減る』
という認識となります。
間違ってはいません。
では『繰下げ受給』を同じ要領で考えてみます。
年金をもらう年齢を原則の65歳から
70歳に向けて遅くする制度が『繰下げ受給』です。
この制度の長所は『年金額が増えること』
でいいですよね。
では短所は?
『70歳からもらうのであれば、
短所は70歳までもらえないこと』でしょうか。
いかがでしょうか。
ここが勘違いの出発点です。
もったいぶらずにお話しますね。
制度上、70歳までもらえない、
70歳になるまでは増額されない、
ということはありません。
70歳からもらうと決めたとしても、
66歳でもらってもいいし、
67歳でもらっても構いません。
もちろん、増額された年金を受け取ることができます。
ちょっと、混乱してきましたか?
順を追って説明いたします。
まず、あなたに質問として投げかけた
『短所は70歳までもらえないこと』でしょうかの部分から。
実はこの言葉には2つ誤りがあります。
ひとつ目が 70歳 という年齢です。
繰下げ受給をする際の手続きにおいては、
あらかじめ年齢を決めておく必要はありません。
65歳になる3カ月前頃に郵送で届く
『年金請求書』という年金をもらうため書類が届きます。
この書類の提出を65歳からもらう方なら
すぐに返送し提出する。
66歳からもらいたい方なら66歳の時に、
67歳なら67歳、70歳なら70歳に提出する。
『年金請求書』という書類を提出するか
手元に取っておくかによって
『もらい始める年齢』が決まります。
ですので、あらかじめ年齢を
決めておく必要はないわけですね。
ふたつ目は『もらえない』という表現。
手続き上もらえないということはないですよね。
書類を出せばその時からもらえる、わけですから。
提出しない時だけは『もらえない』ですね。。。
次に、なぜこのような勘違いが
生まれやすいのかも考えみましょう。
ここまで読み進めてきたあなたなら
発想自体が勘違いということがわかりますよね。
しつこいですがおさらいします。
ここに繰下げ受給をなんとなくわかる方がいて、
老後の年金を繰下げ受給を使って
70歳からもらおうと決めました。
『65歳から70歳までの5年間は我慢の期間だな。
年金がもらえないから頑張らないと、
その代わり70歳からは増額された年金がもらえる』
と考えています。
恐らくこの考え方は、
『繰上げ受給』は60歳からもらえる!
5年間早くもらえるから年金額は減る。
ということは同様に、
『繰下げ受給』は年金額が増やせる!
年金が増えるから5年間我慢する。
という論理、ロジックから
きているのかなと思います。
お知り合いでこのような考え方を
している方がいたら教えてあげてください。
繰下げ受給の手続き
『繰下げ受給』の使い方を解説していきます。
繰下げ受給70歳からと決めた場合でも、
それは心の中で決めることで
実務的には年金を受け取りたい時に書類を提出する
ことはご理解いただけたかと思います。
なお、『繰下げ受給』を活用する場合は
1年間は我慢する必要があります。
66歳までは待たないといけません。
66歳以降であれば1ヵ月単位で
いつでももらうことが可能です。
66歳以降、もらいたい時にもらうことができる制度が
『繰下げ受給』です。
65歳から年金をもらわず、66歳を過ぎる。
ある事情によって66歳の6箇月目から
年金をもらうため書類を提出したとします。
この場合は66歳を過ぎているので
『繰下げ請求』となり、繰り下げた期間6ヵ月に応じた
増額率で増えた年金をずっともらい続けていく
という流れになります。
※繰下げ請求書などの提出は必要
繰下げ受給の増額率
繰下げ受給とは、原則65歳でもらえるところを
66歳から(1年間我慢です)70歳の間で
もらう時期を自分で選べる制度です。
繰下げ受給の良い点は、
年金額を増やせることです。
もらい始める時期1箇月ごとに0.7%の増額率、
1年遅らせると8.4%です。
最大5年遅らせると42%年金を増やすことができます。
ざっくりと金額を計算してみると、
国民年金の老後の年金である
老齢基礎年金は満額で約78万円です。
1年遅らせると約84.5万円、
5年遅らせると約110万円となります。
会社などで働いている方は、
合わせて厚生年金の老後の年金である
老齢厚生年金ももらうことができます。
また、繰下げ受給は、
老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に請求できます。
どちらかを繰下げしたり、
請求時期をずらしたりすることもできますので、
状況に応じて使い分けることが可能です。
繰下げた年金の受け取り方
例えば、68歳から年金をもらうことにした場合、
年金の受け取り方は2つあります。
1)増額された年金額を68歳からもらう方法
2)増額された年金は諦めて、3年分を一度にもらう方法
68歳からの増額された年金(計算すると25.2%増し)
の金額を68歳からもらい始める方法。
仮に、65歳からの原則支給の年金額が
100万円なら約125万円を、
年金額が200万円なら約250万円を
68歳からもらっていく方法ですね。
金額はあくまで概算ですので
イメージが伝わればと思います。
また、増額された年金ではなく、
65歳66歳67歳でもらうはずだった
原則支給の3年分の年金額を一気に
一時金としてもらう方法もあります。
仮に、年金額が100万円なら3年分で300万円、
年金額が200万円なら3年分で
600万円を一度にもらう方法ですね。
金額はあくまで概算ですので
イメージが伝わればと思います。
受け取る時の状況によって
もらい方を選ぶことが可能です。
未支給年金
不謹慎な話で恐縮ですが、
繰下げ請求前にご本人が亡くなってしまった場合、
支給されなかった年金(未支給年金)となり、
この未支給年金を受け取れる遺族の方が、
死亡時までの原則の年金受給額を
一時金でもらえる仕組みとなっています。
どの時期に老後の年金をもらい始めるのが
いいのかはあなた次第となります。
繰下げ受給については、
もらい始める年齢を指定するものではなく、
66歳以降であれば1箇月単位でもらう時期を
選べることをぜひ覚えておいてください。
ご参考になれば幸いです。