今回は
『遺族年金(厚生年金の遺族厚生年金)』
についてお話いたします。
厚生年金の制度ですので、
会社員や公務員などで働いていた旦那さんが
亡くなってしまい、生活を一緒にしていた
奥さんやお子さんなどが受け取る遺族年金、
とイメージしていただければ
わかりやすいかなと思います。
遺族年金とは、年金に入っている方
または入っていた方が亡くなった際に、
生計を維持されていた遺族に対して
支給される年金のこと。
遺族年金は2種類あって、
国民年金の遺族基礎年金と
厚生年金の遺族厚生年金の2つ。
大きな違いは、遺族の範囲です。
受け取れる遺族の方たちが、実は違います。
国民年金は、
『お子さんのいらっしゃる配偶者』か『お子さんのみ』です。
つまり、旦那さんが亡くなった場合には、
妻とお子さんもしくお子さんが受け取る年金となります。
それに対して厚生年金は、
『妻または夫』『お子さん』『父母』『孫』『祖父母』と
遺族の範囲が国民年金と比べて広くなります。
お気づきの方もいらっしゃると思いますが、
『お子さんのいらっしゃる配偶者』か
『お子さん』については、
2つの年金の遺族の範囲に含まれていましたね。
ということは、
国民年金の遺族基礎年金と
厚生年金の遺族厚生年金の両方をもらえる
可能性があるということです。
可能性と言っているのは、
もらうための条件に合わないといけないため。
その条件については、
後ほどお話をしていきます。
覚えておいて欲しいことは、
遺族年金は国民年金と厚生年金の2種類あるが、
遺族の範囲は異なるし
両方受け取れる遺族も限定される、
ということですね。
遺族厚生年金をもらうための2つの条件
厚生年金の『遺族厚生年金』をもらうためには、
大きく2つの条件を満たす必要があります。
それは、亡くなられた方に対する条件と
受け取る遺族に対する条件の2つ。
まずは、亡くなられた方の条件から。
3つの条件のうち、
いずれかに該当する必要があります。
厚生年金に入っている時に亡くなられた、または、厚生年金に入っている時に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に亡くなられた
老齢厚生年金をもらっている方が亡くなられた、または、もらえる条件を満たした方が亡くなられた
1級・2級の障害厚生(共済)年金をもらっていた方が亡くなられた
ひとつ目の条件、
厚生年金に入っている時に亡くなられた、
これは問題ないですね。
厚生年金に入っている時に
初診日がある病気やけがが原因で、
初診日から5年以内に亡くなられた。
こちらはよくわからないですよね。
初診日とは、漢字が示す通り、
初めてお医者さんに診てもらった日を言います。
旦那さんが亡くなられた、
その原因となった病気やけがについて、
初めてお医者さんに診てもらった日。
この日か5年以内に亡くなられた場合
という意味になります。
さらに、保険料の納付要件もみられます。
保険料をきちんと払っていたか。
保険料の支払いが条件を満たさない場合には
『遺族厚生年金』は出ないということになります。
その条件とは、2つあります。
亡くなられた日の前日において、亡くなられた日の属する月の前々月までの被保険者期間に、国民年金の保険料を払った期間もしくは免除された期間・厚生年金への加入期間などが、全体の3分の2以上あること
亡くなられた日が、令和8年3月末まであって、亡くなられた日に65歳未満の場合には、亡くなられた日の前日において、亡くなられた日の属する月の前々月までの直近1年間に、保険料の未納期間がないこと
この2つのうち、どちらかを満たす必要があります。
ふたつ目の老齢厚生年金をもらっている、
または、もらえる条件を満たしたとは、
保険料納付済期間、免除期間、合算対象期間を
合算した期間が25年以あることが必要です。
保険料を払った期間、免除をしてもらった期間、
そして年金制度の変更に伴って保険料を
払っていなくとも
この25年に含めてくれる期間となる合算対象期間、
この3つの期間を足して25年あれば
条件を満たすことになります。
次に、受け取る遺族に対する条件です。
冒頭で紹介した通り、遺族の範囲は、
『妻または夫』『お子さん』『父母』
『孫』『祖父母』となっています。
生計を維持されていること、
旦那さんの収入で生活をしていたこと。
そして、遺族の方の年収が
850万円未満であることが必要です。
さらに、
優先順位や年齢制限などの規定があります。
優先順位が高い順番に年齢制限も
含めてご紹介していきます。
先に登場した遺族が遺族年金をもらえるなら、
その後に登場した遺族は遺族年金は
もらえないということになります。
優先順位の一番高い遺族が
『子のある妻、または、子のある55歳以上の夫』
二番目が
『お子さん』
これらの遺族に対しては、
冒頭で触れた通り、厚生年金の『遺族厚生年金』に
加えて国民年金の『遺族基礎年金』も
もらうことが可能です。
続いて
『子のいない妻』『子のいない夫』
『55歳以上の父母』『孫』『55歳以上の祖父母』
となっています。
お気づきの通り『夫・父母・祖父母』は
55歳以上でないと遺族とはなりません。
なお、『子・孫』は、
高校卒業までのお子さん、お孫さん、
もしくは障害等級1級2級の障害の状態にある
20歳未満のお子さん、お孫さんで
結婚していないことが条件となっています。
また、遺族が妻で30歳未満、
お子さんがいない場合の遺族厚生年金は
5年間の期間限定の支給となります。
遺族厚生年金の金額
亡くなられた方がもらっていた、
または、もらえたであろう
老後の年金をベースに計算されます。
具体的には、厚生年金の老後の年金である
『老齢厚生年金』の報酬比例部分の
3/4の金額となります。
報酬比例の部分とは、
その名の通りで給料などの金額に
比例してもらえるという意味です。
給料の多かった方はおのずと
遺族年金も多くなるという仕組みです。
きちんと金額を知りたい場合は、
お近くの年金事務所に問い合わせてみてください。
概算額でも知りたいという方は
『ねんきんネット』や『ねんきん定期便』で
老後の年金の見込額がわかりますので、
その金額を参考にしてもいいと思います。
一応、計算式をご案内いたします、
報酬比例の年金額は2つの計算式からなっています。
1.平成15年3月以前の加入期間の金額
平均標準報酬月額 × 7.125/1.000 × 平成15年3月までの加入期間の月数
2.平成15年4月以後の加入期間の金額
平均標準報酬額 × 5.481/1.000 × 平成15年4月以降の加入期間の月数
この2つの計算式で算出した金額の3/4ということになります。
なお、厚生年金に入っている時に亡くなられた場合、
または、厚生年金に入っている時に初診日がある
病気やけがが原因で、初診日から5年以内に亡くなられた場合。
1級・2級の障害厚生(共済)年金をもらっていた場合には、
加入期間の月数については、みなし規定というものがありまます。
厚生年金の加入期間の合計が、
300月(25年)未満の場合は、
300月とみなして計算します。
少なくとも25年分としての年金額を保障してくれます。
中高齢の寡婦加算額
遺族厚生年金を受け取る妻に対して、
2つ条件のどちらかを満たすと
年額586,300円の中高齢寡婦加算額が
40歳から65歳まで加算されます。
旦那さんが亡くなられた時に、妻が40歳以上65歳未満で生計を同一にするお子さんがいないこと
40歳に達した時にお子さんがいたため、遺族基礎年金と遺族厚生年金をもらっている『子のある妻』で、お子さんが『お子さんの定義から外れた』状態にあること
妻が40歳以上で、
お子さんが高校卒業となる年齢に達する、
障害等級1級2級の障害の状態にある
お子さんが20歳に達すると
この条件を満たすということになります。
ざっくりと
厚生年金の『遺族厚生年金』をご紹介しました。
細かい規定は省略して大枠のみお伝えしてきました。
ご参考になれば幸いです。