今回は
『66歳以降に増やしてもらえる老後の年金』
についてお話いたします。
年金改革法案の中から
『公的年金の受け取り開始年齢の拡大』を
取り上げてみたいと思います。
現在、60歳から70歳までの間で
老後の年金をもらう年齢を選べますが、
2022年4月から60歳から75歳までに
拡大されます。
65歳から受け取る時に比べて、
75歳からだと老後の年金額が84%増えます。
概要を簡単に言ってしまえばこれで終わりです。
もしここで、増えるのはいいけれど、
70歳まで我慢すれば年金増えますよ。
という仕組みが5年延びて、
75歳まで我慢すればさらに年金額増えますよ。
になっただけでしょ。と。
将来のことはわからないから、
もらう年齢を後ろにずらすのは怖いだけでしょう。
と感じた方いらっしゃるかも知れません。
そう感じた方はこれからお話する内容によって、
少し勘違いしていることがわかるかも知れません。
内容自体は、70歳からそして75歳から、
という『受給開始年齢の繰下げ』のお話。
ですが、
『70歳まで、75歳までずっと我慢、
それまではもらえないから。』
という考えは少し違います。
70歳、75歳とカチッと年齢を決める
必要などありません。
66歳以降ならいつでも欲しい時に、
さらに繰下げによって増えた
老後の年金をもらい始めることができます。
今回は、勘違いをしているかも知れない
『繰下げ』のお話です。
老後の年金を繰下げると年金額が増える、
ということはご存知かと思います。
現在は、70歳まで後ろにずらすことができます。
原則65歳から老後の年金をもらい始めるところを、
70歳からもらうことに決めたとしましょう。
「65歳から70歳までの5年は頑張らないといけないな、
だって5年間は年金もらえないから」
と考えるのではないでしょうか。
ちなみに、『繰下げ』とは逆の『繰上げ』制度、
60歳からもらい始めることができる制度です。
早くもらう分年金額は減ります。
原則よりも5年早くもらえるから
減額された金額はい方がない。
この理屈と同様に、
繰下げをして70歳からもらい始める。
5年遅くもらうことになるけど
年金額が増えるからよしとしよう。
5年間は我慢しよう。
と考えても不思議ではありません。
このように考えるのある意味
自然かも知れません。
あなたはいかがでしょうか。
実は、そのようなことはありません。
我慢する必要はまったくありません。
年金をもらい始める年齢を
70歳からとした場合でも、
66歳以降であれば
いつでも欲しい時にもらうことが可能です。
我慢する必要はこの1年間だけです。
66歳以降、
もらいたい時にもらうことができる制度が
『繰下げ』です。
今回のテーマ、
『66歳以降に増やしてもらえる老後の年金』
実は『繰下げ制度』を指していたわけですね。
話を戻しまして、
手続き上『私は【70歳】からもらいます』と
手を上げる、申請することはしません。
65歳から年金をもらい始める方の場合には、
65歳になる誕生日3箇月前あたりに
年金請求書が届きます。
仮に国民年金と厚生年金の両方を
繰下げしようとするなら、
請求書を返送しなければいいだけです。
放置することで繰下げができる
ということです。
(国民年金もしくは厚生年金どちらかは返送必要)
例えばAさんが、65歳から年金をもらわずに、
1年が経過し66歳となりました。
ご家庭の事情により、66歳の5箇月目から
急にお金が必要となった。
そこで年金をもらいたいので請求します。
とAさんは請求書を提出しました。
手続き上では、
66歳を過ぎているAさんの請求ですので
『繰下げ請求』となり、繰下げた期間(1年5箇月)に
応じた増額率で計算され、増えた年金を
66歳と5箇月のAさんがもらい始めるという流れです。
私は○○歳からもらおうと決めるのは
ご自身の心の中でだけ、
66歳以降ならいつでももらえる、
自由な制度が『繰下げ』制度となります。
繰下げ制度の仕組みをご紹介する前に
折角ですので、繰上げ制度も簡単にお話しますね。
比較しながら理解していただければと思います。
繰上げ制度
繰上げ制度とは、原則65歳でもらえるところを
60歳からもらえるようにする制度です。
繰上げ制度をする際には、繰上げの請求が必要です。
繰下げのような請求書の放置はしません。
65歳から1箇月単位で最大60歳まで
繰り上げてもらい始めることができます。
つまり、1年なら12箇月、5年なら60箇月ありますので、
約60の期日でもってもらい始める時期を
設定することができるわけですね。
繰上げ制度の良い点は、ずばり早くお金をもらえることです。
しかし、早くもらええる代わりに、
もらう時期を1箇月早めるごとに
0.5%ずつ年金額が減ります。
こちらが悪い点です。
さらに、一度手続き(請求)をすると
取り消しはできず、減額された年金額は
一生涯続きますので、繰上げは慎重に検討してください。
繰下げ制度
繰下げ制度とは、
原則65歳でもらえるところを
66歳から70歳の間でももらえる制度です。
繰下げ制度の良い点は、
誰でも簡単に年金を増やせることです。
もらい始める時期を1年遅らせると8.4%、
最大5年遅らせると42%年金を
増やすことができます。
さらに、75歳まで10年遅らせると84%増額となります。
66歳以降は、
1箇月ごとに0.7%の増額率となっています。
例えば、国民年金の老後の年金である
老齢基礎年金が満額で78万100円です。
わかりやすく約80万円で計算すると、
1年遅らせると86万7200円、
5年遅らせると113万6000円、
10年だと147万2000円となります。
さらに会社などで働いている方は、
合わせて厚生年金の老後の年金である
老齢厚生年金ももらうことができます。
また、繰下げ制度は、
老齢基礎年金と老齢厚生年金を
別々に請求したり、どちらかだけを繰下げしたり、
請求時期をずらしてもらうことも可能です。
繰り下げた年金の受け取り方法
繰下げた年金の受け取り方は2つあります。
例えば、65歳前の時点で70歳まで
繰下げてもらうことに決めました。
しかし、67歳の年末、
そろそろ年金をもらおうかなと思い直し、
翌年68歳から年金をもらうことに決まました。
この場合、年金の受け取り方は2つあります。
1)繰下げによって増えた年金額を68歳からもらう方法
2)繰下げによって増えて年金はやめて、3年分を一度にもらう方法
ひとつ目は、
68歳からの増額された年金
(計算すると25.2%増し)の金額を
68歳からもらい始める方法。
仮に、65歳からの原則支給の年金額が
100万円なら125万2000円を、
年金額が200万円なら250万4000円を
68歳からもらっていく方法ですね。
ふたつ目は、
繰下げによる増額された年金は諦めて、
65歳66歳67歳でもらうはずだった
原則支給の3年分の年金額を一気に
一時金としてもらう方法。
仮に、年金額が100万円なら3年分で300万円、
年金額が200万円なら3年分で600万円を
一度にもらう方法ですね。
割と柔軟な受け取り方が用意されています。
不謹慎な話で恐縮ですが、
万が一、繰下げ請求をする前にご本人が
亡くなってしまった場合、
支給されなかった年金(「未支給年金」と言いますが、)
この未支給年金を受け取れる遺族の方が、
死亡時までの原則受給額を
一時金でもらえる仕組みとなっています。
どの時期に老後の年金を
もらい始めるのがいいのかはあなた次第となります。
繰上げ制度については、
取消しができませんので慎重に決めてください。
繰下げ制度については、
もらい始める年齢を指定するものではなく、
66歳以降であれば1箇月単位でもらう時期を
選べることをぜひ覚えておいてください。
請求書を放置で繰下げ、です。
ご参考になれば幸いです。