今回は

老後の年金 早くもらうか?遅くもらうか?

についてお話いたします。

 

具体的に言えば、

老後の年金を早くもらう「繰上げ受給」と

遅くもらう繰下げ受給」のどちらがいいのか?

 

老後の年金は原則65歳からの支給、

もらうことができますが、

60歳から70歳のこの10年の間で、

あなた自身でもらい始める時期を

選ぶことができます。

 

65歳より早くもらうことを「繰上げ受給」、

65歳より遅くもらうことを「繰下げ支給

と呼びます。

 

厚生労働省の平成29年度調査によると、

国民年金の老齢基礎年金の場合、

65歳からの原則支給で年金をもらっている方は

全体の64.5%で、繰上げ受給の方が32.3%、

繰下げ受給の方は1.5%という統計データが

出ています。

 

全体が100人なら、

繰下げ受給をする方は1人か2人という

割合になる訳ですね。

繰下げをする方はほとんどいないのが

現状であるという結果。

 

 

理由は簡単に想像できますよね。

繰下げることで年金額が増えるのはいいけど、

平均寿命は延びてきているとは言え、

それはあくまで平均値。

 

自分自身が長生きできるのか、

繰下げした年齢まで元気でいられるのか。

また、繰下げた年齢からもらい始めてから

長くもらい続けることができるのか。

 

このあたりが繰下げ受給を

選ばない理由だと思います。

 

そこで今回は、

 

繰下げ受給における勘違いしやすい点と

繰上げ受給と繰下げ受給の仕組み。

 

この2つについてお話をいたします。

 

繰下げ受給における勘違いしやすい点

この点を勘違いしていると、

年金をもらい始める年齢を後ろにずらす

繰下げ受給」のお話が頭に入ってこない

可能性がありますので、制度の解説より先にお話します。

 

原則65歳から老後の年金をもらい始めるところを、

70歳からもらうことに決めたとしましょう。

多くの方は「よし、5年は頑張らないといけないな」と

思うのではないでしょうか。

 

恐らくこの考え方は、

繰上げをして60歳からもらい始める、

年金額は減るけども原則よりも

5年早くもらえるからよしとしよう。

 

だから反対に、

繰下げをした70歳からもらい始める。

5年遅くもらうことになるけども

年金額が増えるからよしとしよう。

 

5年間は我慢しよう。という論理、ロジックから

きているのかなと思います。

いかがでしょうか。

 

実際は、そのようなことはありません。

70歳からと決めた場合でも、

66歳以降であれば

いつでももらうことが可能です。

 

66歳以降、

もらいたい時にもらうことができる制度が

繰下げ受給」です。

 

あらかじめ「私は70歳からもらいます」という

手続きをするのではなく、

65歳から年金をもらわず、66歳を過ぎました、

66歳の3箇月目から年金をもらいたいので請求します。

 

66歳を過ぎているので請求は

繰下げ請求」という名称となり、

繰り下げた期間に応じた増額率で

増えた年金を66歳3箇月分から

もらい始めるという流れです。

 

70歳からもらおうと決めるのは心の中でだけ、

70歳までは年金は一切もらえないという制度

ではありません。もっと柔軟な、自由のきく制度です。

 

もし、勘違いされていた、知らなかった方なら

この後のお話も聞きやすくなったのではないでしょうか。

 

繰上げ受給と繰下げ受給の仕組み

繰上げ受給とは、

原則65歳でもらえるところを60歳から

もらえるようにする制度です。

 

繰上げ受給をする際には、

繰上げの請求が必要です。

65歳から1箇月単位で最大60歳まで

繰り上げてもらい始めることができます。

 

すなわち、1年で12箇月、5年で60箇月なので、

約60の期日でもってもらい始める時期を

設定することができるわけですね。

 

繰上げ受給の良い点は、

ずばり早くお金をもらえることです。

早くもらええる代わりに

良くない点もあります。

 

良い点と良くない点を踏まえて、

活用していただければと思います。

 

悪い点は、もらう時期を1箇月早めるごとに

0.5%ずつ年金額が減ることです。

しかも、一度手続き(請求)をすると

取り消しはできず、減額は一生涯続きます。

 

ここで気になるのは、

60歳から減った年金額をもらい続ける場合と、

65歳から減らない年金額をもらい続ける場合、

どちらの合計額が多くなるのか。

 

当然、早くもらい始めても、

65歳からの年金合計額は

やがて追いつきます。

 

例え話でいきます。

速水さんと遅見さんがいて年金額は

一緒としましょう。

 

速水さんが60歳で30%減った

年金額をもらい始まます。

5年遅れて、遅見さんが65歳から

原則の年金額をもらい始めた場合は

76歳」で追いつきます。

 

速水さんが76歳までに

受け取った年金の合計額に、

遅見さんの受け取った年金の合計額が

ほぼ一緒になります。

 

そして、そこからは差が広がります。

遅見さんがもらう年額が速水さんより

多いからですね。

 

速水さんが61歳でもらうなら

77歳で追いつかれ、

62歳なら78歳、63歳なら79歳、

64歳なら80歳でとなります。

 

ひとつの見方ですが、

男性の平均寿命(約81歳)より

前に年金の合計額が

逆転することになります。

 

そのように減額率を

計算しているのかも知れませんが。

 

女性の場合の平均寿命は約87歳ですので、

長生きをすればするほど、

年金の合計額は多くなるわけです。

 

繰下げ受給とは、

原則65歳でもらえるところを

66歳から70歳の間でももらえる制度です。

 

繰下げ受給の良い点は、

誰でも簡単に年金を増やせることです。

もらい始める時期を1年遅らせると8.4%、

最大5年遅らせると42%年金を

増やすことができます。

 

66歳以降は、

1箇月単位0.7%の増額率となります。

 

例えば、国民年金の老後の年金である

老齢基礎年金が満額で78万100円です。

わかりやすく約80万円で計算すると、

1年遅らせると86万7200円、

5年遅らせると113万6000円となります。

 

さらに会社員などで働いている方は、

合わせて厚生年金の老後の年金である

老齢厚生年金ももらうことができます。

 

なお、繰下げ受給は、

老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に

繰下げ請求できます。

どちらかだけを繰下げ請求したり、

請求時期をずらしてもらったり

することも可能です。

 

さらに、受け取り方は2つあります。

例えば、65歳前の時点で70歳まで

繰下げてもらうことに決めました。

 

しかし、67歳の冬の時期、

病気を患い体調を崩してしまった。

そこで、68歳から年金をもらうことにしよう。

まったく問題ありません。

 

この場合、年金の受け取り方は2つ。

1)繰下げによって増えた年金額を

68歳からもらう方法

2)繰下げによって増えて年金はやめて、

3年分を一度にもらう方法

 

ひとつ目は、68歳からの増額された

年金(計算すると25.2%増し)の金額を

68歳からもらい始める方法。

仮に、65歳からの原則支給の年金額が

100万円なら125万2000円を、

年金額が200万円なら250万4000円を

68歳からもらっていく方法ですね。

 

二つ目は、繰下げによる増額された年金は諦めて、

65歳66歳67歳でもらうはずだった

原則支給の3年分の年金額を一気に

一時金としてもらう方法。

 

仮に、年金額が100万円なら3年分で300万円、

年金額が200万円なら3年分で600万円を

一度にもらう方法ですね。

 

当然、今回の例の場合は医療費などを考慮して、

二つ目の方法がいいのかなと思います。

 

不謹慎な話で恐縮ですが

大切なことなのでお伝えします。

万が一、繰下げ請求前にご本人が

亡くなってしまった場合ですが、

支給されなかった年金(「未支給年金」と言います)

この未支給年金を受け取れる遺族の方が、

死亡時までの原則受給額を一時金で

もらえる仕組みとなっています。

 

繰下げ受給の良くない点は、

厚生年金に加算される加給年金(家族手当)や

振替加算が繰下げをしている間は

支給が止まってしまいます。

また、繰下げによる増額もありません。

 

まとめとして、

繰上げ受給と繰下げ受給のポイントを

4つずつご紹介します。

 

『繰上げ受給の注意点』

○ 請求時点の減額率は65歳以降一生涯続く

○ 国民年金の任意加入ができなくなる

(60歳以降年金額を増やす方法のひとつ)

○ 障害年金がもらえなくなる(厚生年金加入中は除く)

○ 老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰上げしないといけない

 

『繰下げ受給の注意点』

○ 実際の繰下げ請求は66歳以降となる

○ 繰下げ請求時に年金のもらい方は2種類ある

○ 老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰下げることができる

○ 万が一の場合、請求前の年金を遺族が一時金で受け取れる

 

繰上げ受給と繰下げ受給について

お話をしてきました。

 

どの時期に老後の年金をもらい始めるのが

いいのかはあなた次第となります。

 

繰上げ受給については、

取消しができませんので慎重に決めてください。

繰下げ受給については、

もらい始める年齢を指定するものではなく、

66歳以降であれば1箇月単位でもらう時期を

選べることをぜひ覚えておいてください。

 

65歳から1年間待って66歳となればそれ以降、

年の利回り8.4%の金融商品になったと

考えることもできるのかも知れません。

 

ご参考になれば幸いです。